君の隣
――婦人科外来の処置室に行く朱音の白衣の後ろ姿。
 そっと、その後をついていった。

朱音は理名を静かに診察室へ招き入れた。

電子カルテの画面を最小限にしながら、資料を広げる。

「理名先生。

 ホルモン療法について──今日は少し、具体的な説明をしておきますね」

理名は黙って頷いた。

 迷いが晴れたわけじゃない。

 でも、向き合う覚悟だけは持っていた。

朱音は、静かに言葉を紡ぐ。

「具体的には、注射や内服薬を使ってホルモンバランスをコントロールします。

 副作用も少なからずありますが、私たちがしっかり管理しますから、安心してください」

淡々と、けれど丁寧に話される説明。

理名自身は、何度も学会や文献で目にしている情報──

 それが今、まるで“他人事ではない”現実として響く。

「軽い頭痛や体のだるさ、気分の変動が出ることがあります。
 でもそれは、体が変化に適応している証拠。

 無理はしないで、何かあればすぐに教えてくださいね」

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