君の隣
朱音の声には、医師としての専門性と、女性としての共感が滲んでいた。
理名は、少し黙ってから言った。
「……私、なんでこんなに怖がってたんでしょうね。
たぶん“副作用”が怖いんじゃないんです。
“選ぶ”ってことが、怖かったんだと思います。
“自分で自分の身体の未来を決める”って、
……思ったよりずっと、重かった」
朱音は、理名の手にそっと触れた。
「迷って当然よ。
理名先生は、ずっと“他人の選択を支える側”にいたんだもの。
でも今は、自分のために選ぶ番。
……それって、決して弱さじゃないわ」
理名は深く息を吐き、静かに頷いた。
「……治療、受けます。
患者としてじゃなく、医師としての矜持としても。
“自分を診る”ってこと、やってみたいから」
その言葉は、どこか誓いのようだった。
その夜。
自宅マンションで夕食を終えた頃。
理名はソファに座り、拓実に報告した。
「ホルモン療法、始めることにしたよ」
拓実はそれだけで、彼女の迷いと決意をすべて汲んだように頷く。
「大丈夫。
副作用が出たら、俺が真っ先に気づくから。
何度でも薬局行くし、夜中でも背中さするし、
……たぶん、心配しすぎてウザがられるくらいには動くと思う」
理名は、ふっと笑った。
「それでもいい。
ウザくなったら、文句言うから」
「じゃあそのときは、キスで黙らせる」
「……バカ」
笑いながら、理名はそっと拓実の胸に顔を埋めた。
怖さはゼロにはならない。
けれど、“自分で選んだ”という事実が、理名の背筋を少しずつまっすぐにする。
“私の身体は、私のもの”
“でも、私はもうひとりじゃない”
そう思えるようになったことが、
何よりの前進だった。
理名は、少し黙ってから言った。
「……私、なんでこんなに怖がってたんでしょうね。
たぶん“副作用”が怖いんじゃないんです。
“選ぶ”ってことが、怖かったんだと思います。
“自分で自分の身体の未来を決める”って、
……思ったよりずっと、重かった」
朱音は、理名の手にそっと触れた。
「迷って当然よ。
理名先生は、ずっと“他人の選択を支える側”にいたんだもの。
でも今は、自分のために選ぶ番。
……それって、決して弱さじゃないわ」
理名は深く息を吐き、静かに頷いた。
「……治療、受けます。
患者としてじゃなく、医師としての矜持としても。
“自分を診る”ってこと、やってみたいから」
その言葉は、どこか誓いのようだった。
その夜。
自宅マンションで夕食を終えた頃。
理名はソファに座り、拓実に報告した。
「ホルモン療法、始めることにしたよ」
拓実はそれだけで、彼女の迷いと決意をすべて汲んだように頷く。
「大丈夫。
副作用が出たら、俺が真っ先に気づくから。
何度でも薬局行くし、夜中でも背中さするし、
……たぶん、心配しすぎてウザがられるくらいには動くと思う」
理名は、ふっと笑った。
「それでもいい。
ウザくなったら、文句言うから」
「じゃあそのときは、キスで黙らせる」
「……バカ」
笑いながら、理名はそっと拓実の胸に顔を埋めた。
怖さはゼロにはならない。
けれど、“自分で選んだ”という事実が、理名の背筋を少しずつまっすぐにする。
“私の身体は、私のもの”
“でも、私はもうひとりじゃない”
そう思えるようになったことが、
何よりの前進だった。