君の隣
「そっか……そっか。

 もう、大丈夫」

 自分にそう言い聞かせるのが、もう癖になっていた。

 
夜。

 拓実が帰宅すると、理名はテーブルにきちんと夕食を並べていた。

「今日、検査結果って……」

「出たよ。陰性。

 もう慣れたけど」

「……そっか」

 返す言葉に詰まった拓実を、理名は見ようともしなかった。

「別に、落ち込んでるわけじゃないし。

 医学的にはよくあること。

 妊娠成立の確率は一周期でせいぜい20%以下。

 だから、想定内」

「……それ、本当に理名の気持ち?」

「は?」

「俺にじゃなくて、自分自身に言い聞かせてるように見えるんだよ」

 

静寂。

食卓に流れた空気が、急に冷たくなる。

「じゃあ、どうしろって言うの?

 落ち込めばよかった? 泣けばよかった?
 
そんなことで妊娠できるなら、とっくに──」

 

言いかけて、理名は口をつぐんだ。

拓実も、目を伏せたまま言葉を選べずにいた。

 

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