君の隣
翌日。

 理名は午後の休憩時間、ひとりで婦人科外来に足を運んだ。

朱音は診察の合間に、理名を空いている診察室へと通した。

 

「……限界かもって、思ったの」

 診察ベッドの縁に座り、理名は静かにこぼした。

「何に対して?」

そう朱音が聞くと、理名は小さく息を吐いた。

「自分に。

 ……患者でいる自分に」

「どうして?」

「うまくやらなきゃって、いつも思ってる。

 正しいタイミング、正しい体温、正しい記録……

 それでもダメなら、自分を責めるしかなくなる。
 何が間違ってたの?って。
 
それなのに、それを拓実にも見せられない。

 医者として、妻として、情けない自分を知られたくないの」

 朱音は黙って頷いてから、机の上の模型をゆっくり指先で押した。

「理名ちゃん。

 ひとつだけ覚えてて」

 彼女の声は、まっすぐだった。

 
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