君の隣
「でも、信じてるからこそ……手段は選びたくなる。
 “自然に”が正解かどうかなんて、誰にもわからないのにね」

 理名は、自分の膝の上で手を組んだ。

「……ねえ、拓実。

 私、すごく勝手なのかもしれない」

「どうして?」

「自然妊娠にこだわるくせに、陽性反応が出ないたびに、落ち込んで。

 そのたびに、“私は女として失格なんじゃないか”って……思ってしまう」

 

拓実は、ゆっくり手を伸ばし、理名の手を包み込んだ。

「理名、覚えてる?

 俺がプロポーズしたとき、なんて言ったか」

彼女は目を伏せたまま、小さく頷いた。

「“君と一緒に、生きていたい”って……言ってくれた」

「そう。子どもがいるかどうかじゃない。

 俺は、理名と“家族になりたい”って思ったんだよ。
 ふたりでも、三人でも、どんな形でも。

 理名が笑ってくれるなら、それでいい」

 
理名の瞳が、じんわりと揺れはじめる。

「拓実……」

「無理はしてほしくない。

 でも、もし迷ってるなら……
 “進んでみよう”って言う選択肢があることも、知っててほしい。

 どんな道を選んでも、俺は隣にいるよ」

 言葉のすべてが、心の奥に染みていく。

 
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