君の隣
季節は少しだけ進んでいた。

 2回目の人工授精の結果を待つ数日間、理名はどこか落ち着かない日々を過ごしていた。

そして──またしても、結果は「陰性」。

それを知った瞬間、理名は頷くだけで何も言えなかった。

 自分が思っているより、心が疲弊していることに気づいていた。

その数日後。

 レセプトを入力していた理名。

 元・指導医でもある麻未が、声を掛けた。

「……ちょっと、いいかな。
 席、外せる?」

「あ、はい。

 大丈夫です」

病院の屋上。

 焼けるような日差しが、身にしみた。

どこか言いづらそうに口を開いた彼女の表情。

 理名は何かを察した。

「…妊娠したの」

一瞬、目の間が真っ暗になった。

理名は、笑いたかった。
祝福したかった。
でも、うまく言葉が出てこなかった。

「……そうですか。

 おめでとうございます」

口から滑り出たのは、自分でも分かる、震えた声。

それ以上何も言わずに、麻未はそっとその場を離れた。

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