君の隣
部屋の明かりが、いつもより眩しく感じた。

 玄関で黒いパンプスを脱いだ瞬間、全身の力が抜けて、理名はその場に座り込んだ。

 何も言わなくても、拓実はすぐに駆けつけてくれた。

「……理名?」

返事をする代わりに、理名はそっと首を振った。

 感情が一滴、また一滴と、静かに溢れ出す。

気づけば、声もなく、彼の胸の中で泣いていた。

 「……妊娠、したんだって……

 麻未先生……」

拓実の手が、彼女の背中に回る。

 優しく、ゆっくりと撫でてくれるその手の温度に、理名の声が震えた。

「おめでとうって……言った。

 言えたよ……でも……
でもね、拓実……。

 ほんとは、言いたくなかった……

 私、全然、平気じゃなかった……」

どこかで「負けた」ように感じてしまう。

 
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