君の隣
週末の夜。

 リビングのテーブルは、式場の資料と治療スケジュール表で埋まっていた。

「……この日、通院だよね?
 席順の最終打ち合わせと被ってる」

「うん。

うん。午前中で済むと思うけど、時間がかかりそうなら私が会場に連絡しておく」

「通院が優先。

 午前中に式場に俺が行って、会場の装花と一緒に打ち合わせしてくる」

「……すごい。

 新郎のほうが率先してる」

「花の色、白とピンク系でいい?

 桜の季節だから、合うものにしたい」

「うん!

 それ、いいね」

ふと理名がペンを置き、指先を組む。

 静かに目を閉じて──ぽつりと言った。

「……今年は、一生忘れられない春になる気がする」

拓実はその横顔を見つめ、優しく微笑んだ。

「もうなってるよ」

式の準備に追われる合間の夜。

 拓実がふと提案した。

「仕事、早く終わりそうだからさ……
 行ってみない?

 あの並木道。

 桜は、咲いてないだろうけど」

理名は瞬きしたあと、小さく笑う。

「……覚えてたんだ。

  私、あそこで拓実にキスされて、あったかくて、幸せだった。
 高校時代は、拓実がドイツに留学してたからね。

 デートらしいデートが出来たから、嬉しかったよ」

「俺だって、あそこで思ったよ。

 “この人に、一生かけて寄り添いたい”って」

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