君の隣
桜を見に行った夜から、一週間と少しを過ぎた頃。

 外来の昼休み。

 理名はロッカー室でそっと下腹部に手を当てていた。

(……なんか、違う。
 体がいつもと違う)

 理名はこれまでに何度か人工授精を試みてきた。

 周期ごとに期待と不安を繰り返しながらも、なかなか結果は出ず、心は少しずつ疲れていた。

(また今回も……ダメなんだろうな)

 そう思うことが何度もあった。

今回は何かが違うような気がしていた。
 
基礎体温は微妙に高い。

 だるさも、眠気もある。

 何より、生理が予定日を過ぎても来ていない。

(気のせいかもしれない。

 こんなふうに期待して、何度も落ち込んだ……)

それでも、気になった。

カンファレンス終わり。

 医局の椅子に腰を降ろしていた朱音先生。

 彼女に意を決して声を掛けた。

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