君の隣

努力の証

「ねぇ、朱音先生。

 なんだか最近、身体がだるくて……眠気もずっと抜けなくて。
 それに、生理も予定日を過ぎてるの。
 もし、万が一ってことがあったら……

 そう、期待しちゃう。

 調べてもらっても、いい?」

朱音は理名の目を見て、黙って頷くと、紙コップを手渡した。

 「尿検査ね。

 処置室のトイレで採ってきて。

 個室内の提出窓に置いてくれればいいから」

 理名は紙コップを受け取り、処置室の奥へ向かった。

 個室の扉を閉めて、鍵を掛けると、静かな空気が広がる。

 手のひらにじんわり汗が滲み、紙コップを持つ手が少し震えていた。

(だるさも、眠気も、いつもと違う。
 気のせいかもしれない)

 採尿を終え、提出窓の扉をそっと開ける。

 白い台の上に紙コップを置き、扉を静かに閉じる。

その音が、妙に大きく響いた。

 ──数分後。

 朱音は検査薬に尿を滴下し、無言で結果を見つめる。

 理名は待合室の椅子に座りながら、心臓の音が耳に響くほどの緊張を感じていた。

 指先が冷たく、時間の流れが止まったように感じる。

 
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