君の隣
式まで、あと2日と迫った夜──

リビングのソファに、ふたり並んで座る。

 理名は、難しい顔で、折り目のついた紙を何度も読み返していた。

「……それ、空の上で見守る両親への手紙?」

拓実がマグカップを手渡しながら、そっと尋ねる。

「うん。
……なんか、まだしっくりこなくて。

「『天国の両親へ

きっと今頃、空の上で号泣していることでしょう。

小さな頃から、母親は看護師としての仕事に一生懸命でしたね。

 そんな貴女の背中を見て育ったからか、私も医師を志して、今は何とかこなせています。

どこかに遊びに行ったりはあまり出来なかったけど、私の自慢の母です』って……」

文字の端は涙で少し滲んでいた。

理名は微笑みながらも、指先がすこしだけ震えている。

「ちゃんと想いを言葉にするのって、難しいね。
 書きたいことが、溢れてきて。

いざとなると……泣いちゃいそう」

「泣いていいよ。

俺も、たぶん……
 
いや、絶対泣く」

拓実はそう言って、理名の肩をそっと抱き寄せた。

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