君の隣
部屋の中には、ほんのり紅茶の香り。

静かで、あたたかくて──

ふたりだけの時間がすこしずつ、愛しさであふれていく。

「ねえ、拓実……

あと2日で、私たち“夫婦”になるんだよ?」

「うん」

「でも、なんかもう……ずっと前から、そうだったみたいに感じるよ」

「俺も。

 ……もうずっと、理名と家族だった気がする」

小さく笑い合いながら、そっと額を重ねる。
それはキスじゃない。

ただ、ふたりの呼吸が重なる距離。

 「……式が終わったら、ちょっとのんびりしようか」

「うん。

 どこか、行きたいとこある?」

「行き先より、大事なのは一緒にいることじゃない?」

「……またそうやって、甘いこと言うんだから、
拓実ったら」

理名がそっと顔を上げて、隣に座る彼の顔を視界に入れた。

 拓実の瞳の奥が、まるで星のように澄んでいて、思わず見惚れる。

「でも……嬉しい」

彼女は笑って、そのまま拓実の胸に頬を寄せた。

 心臓の音が、静かに、優しく響く。

やがてソファのクッションに身を沈めるように、ふたりはゆっくりと寄り添った。

深いキスを交わすでもなく、言葉を交わすでもなく、ただ静かに。

けれど、心は確かに重なっていた。

 
明後日、理名は白いドレスを着て、
拓実のもとへ歩いていく。

──夜空の星のように輝く未来を、ふたりは“信じきって”いた。

「明後日、理名がとびきり綺麗な姿を想像したら、もう泣きそう」

「え……!?

 今からは早すぎない?
 せめて当日に泣いてよね……」

照明を落としたリビング。

 壁にかかるカレンダーには、赤い丸がついていた。

4月7日──「結婚式」

もう、すぐそこ。

そしてその日は──

ふたりにとって、“新しい命”の報せとともに、
永遠の始まりとなる。
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