君の隣
麻未は、ナースステーションの明かりを背に、そっと腕を絡めてくる。
声も、仕草も、どこか甘く、とろけそうで──
普段は小児科医としてしっかり者の彼女の、素の顔。
「……感じたよ。
めちゃくちゃ」
慎也は、ぐっと手を握り返し、小さく囁く。
「今すぐ、麻未とキスしたくなるくらいには」
「も、もう……それ私のセリフ……」
小さく笑い合ったその瞬間──
「……岡崎先生!
小児科に急患が入りました!」
ナースの声が飛んできた。
麻未は、混乱を防ぐため、病院内では旧姓の『岡崎を使用している。
麻未は一瞬、名残惜しそうに慎也の腕を離すと、深く頷いた。
「……行かなきゃ。
ごめん、また後でね」
「いいよ。
……待ってる」
彼女が駆け出した背中と、揺れる暗い茶色のポニーテールを見つめる。
彼は静かに手を胸元に戻した。
「──おあずけ、だな。
耐えられるかな、俺……」
そっと、呟いた言葉は、誰にも聞かれることはなく、慌ただしくなる病院の空気に溶けていった。
声も、仕草も、どこか甘く、とろけそうで──
普段は小児科医としてしっかり者の彼女の、素の顔。
「……感じたよ。
めちゃくちゃ」
慎也は、ぐっと手を握り返し、小さく囁く。
「今すぐ、麻未とキスしたくなるくらいには」
「も、もう……それ私のセリフ……」
小さく笑い合ったその瞬間──
「……岡崎先生!
小児科に急患が入りました!」
ナースの声が飛んできた。
麻未は、混乱を防ぐため、病院内では旧姓の『岡崎を使用している。
麻未は一瞬、名残惜しそうに慎也の腕を離すと、深く頷いた。
「……行かなきゃ。
ごめん、また後でね」
「いいよ。
……待ってる」
彼女が駆け出した背中と、揺れる暗い茶色のポニーテールを見つめる。
彼は静かに手を胸元に戻した。
「──おあずけ、だな。
耐えられるかな、俺……」
そっと、呟いた言葉は、誰にも聞かれることはなく、慌ただしくなる病院の空気に溶けていった。