君の隣
診察室の小さな椅子に腰を下ろした麻未。

 手のひらを重ねたまま、少し戸惑ったように視線を落とした。

「ここ数日、朝起きたときに少しふらっとして……

 食欲はあるんですけど、ちょっと胸がムカッとする瞬間があって。

……生理も、予定日から少し遅れてて」

言葉を選びながら話す彼女の横顔に、朱音は頷きながら優しく寄り添う。


「そっか……。

 前の周期から考えて、今どれくらい?」

「……予定日から、7日目です」

朱音の手が、スムーズにキーボードを叩きながらメモを取っていく。

「妊娠を望んでた?」

「……はい。

ずっとじゃないけど……

最近は、慎也とも、そういう話をするようになってて」

言葉の途中で、ほんの少し照れくさそうに笑う。

朱音はふっと笑って、表情をやわらげると、問診表を閉じた。

「じゃあ──
 まずは尿検査してみようか」

麻未が、診察室に戻った頃。

 朱音先生は検査薬をそっと机に置いた。

 ハッキリと浮かぶ、ふたつの線。

「……陽性、だね」

「…………あ……」

息を飲むように、麻未は言葉を失った。

喜び──だけではない。

 戸惑い、怖さ、驚き、安堵……


 あらゆる感情が一気に押し寄せる。

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