君の隣
翌日。

 時計の針が、夜の10時を過ぎたころ。

 麻未は、スタッフルームの片隅のソファで、膝を抱えて眠っていた。

当直明けの仮眠ではない。

 午後の診察が終わった頃。

 夕方から続く悪阻のだるさに耐えきれず、ほんの数分だけ目を閉じた──

 そのはずだったのに。

「……岡崎先生?」

同僚が気遣うように声をかけたが、麻未は応えない。

 深く眠っていた。

顔色は少し悪い。

 頬もこけて見える。

 冷えないようにブランケットがそっとかけられた身体。
 
ふと──その上に見慣れた大きな手が添えられた。

「……栗沢先生」

「ごめん、迎えにきました」

 慎也は、小児科のスタッフに軽く頭を下げていく。

 そして、静かに麻未の横にしゃがみ込んだ。

「仕事、終わってたのに……」

「終わってたから、来れたんだよ」

 そう言って、彼は麻未の足元にある小さなバッグを肩にかけた。

「大丈夫。

 俺が連れて帰るから」

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