君の隣
「……こんなふうに送り出してもらえるなんて、思ってなかったから」

「岡崎先生が頑張ってきたからだよ!」

「ほんとですよ。
 悪阻でつらそうなときも、手抜きひとつしなかったじゃないですか」

「うん。
 だから今は、しっかり休んで、母になる準備してください」

ナースたちがそれぞれの言葉で、麻未の背中を押してくれる。

そして──
最後に、理名がふと目を合わせて、静かに言った。

「麻未先輩。

 おめでとうございます。
 身体、気をつけてくださいね」

麻未の胸に、ふわりと温かい風が吹いた。

「あのね……」

彼女は、思いきって言葉をつなげた。

「ずっと、“私だけが先に進んでいいのかな”って、悩んでた。

 でも──今は、理名ちゃんや、みんなのやさしさに背中を押されてる」

理名は静かに笑い、ゆっくりと首を振る。

「私も、麻未先輩に何度も背中を押されてきたんです。

 だから今度は、私がその役目です」

そう言って差し出された手を、麻未はぎゅっと握った。

職場をあとにするその背中を、スタッフたちは拍手で見送った。

「じゃあ、いってきます。

 しばらくは、大仕事に専念してきますね!」

「がんばって、ママ先生!」

笑顔とエールに見送られて、麻未は病院の玄関を後にした。

冷たい冬の風。
 苦手な季節が、少し好きになった気がした。

 少し前なら不安ばかりだった産休入りのこの日──

 今の彼女の胸には、支えてくれた仲間たちのぬくもりがしっかりと根づいていた。

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