君の隣
ドアを開けた慎也が、柔らかい笑みを浮かべて入ってくる。

 手には、トレイに乗った軽い朝食と、ほんの少しのルイボスティー。

「今日は、特製“おつかれさま”モーニング。

 味は保証しないけど、気持ちは100点のつもり」

「……ふふ、ありがとう」

麻未は起き上がり、彼の差し出した枕に背中を預ける。

「うまく、休めるかなあ。

 なんか、変な感じ」

「長く頑張ってきた人ほど、そう感じるんだよ」

慎也はそう言って、麻未の手を自分の掌でそっと包む。

「でもね、麻未」

彼の声は、ゆっくりと落ち着いていた。

「今日からは、きみが“あなた自身”を中心にしていい時間なんだよ。

 誰かの命のために急ぐことも、背負うことも、今はひとまず置いて」

「……うん」

「きみの好きな音楽聴いて、午後に昼寝するもよし。

 買い物の途中で疲れたらすぐ帰ってきてもいい。

 仕事してたときは、できなかったことを、いまの“ふたり分の身体”で楽しんで」

その言葉に、麻未の胸がゆるりとほぐれる。

 思わず目を細めて、ふたりの手のあいだに小さく咲いた温もりを見つめた。

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