恋がしたい。ただ恋がしたい。

「香織はさ、気は強いけど、不満は言わないし、俺がちょっと我が儘言ってもさ、はいはいって笑って聞いてくれて、うまく俺を立ててくれてた。付き合う前から明るくて、てきぱきしてて、みんなの事うまく仕切ってくれて、そういう気が利いて頼りになる所が好きだった。」


「プロポーズの用意もしてさ、後は香織のオッケーをもらうだけ、って時になってさ、香織ってほんとに俺の事好きなのかな?…って疑問に思ったんだ。」


勝手な言葉に唖然とする。



『私のこと、ほんとに好きだった?』


そう聞きたいのはこっちのほうなのに。


「…私を試したんだ……。」


『好きかどうか疑問に思った』


たったそれだけの事で、私は信じていた恋人に突然裏切られて、大勢の前で傷ついて、挙げ句プライベートな部分までぐちゃぐちゃに踏み荒らされたのか。


「悪いとは思ったよ。だけどさ、俺は本気で香織の事を愛していたし、香織の本当の気持ちを知りたかっただけだよ。」


本当の気持ちだなんて、聞いて呆れる。


亨は私を傷つけた自覚も無く、だた私が『別れたくない』とすがりついて来るのを待っていただけでしょ?
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