恋がしたい。ただ恋がしたい。

***

道路沿いにある大きな窓から、店内の様子を伺う。


ディナーの時間に入った『Felicita』の店内は、週末ということもあり、カップルや家族連れで賑わっていた。


だけど、他のウェイターの姿は目にするけれど、いつもなら先に立ってお客さんの間を忙しく動き回っているはずの裕介くんの姿が見えない。


厨房の方にでも行ってるのかな…


しばらく窓の近くで見ていたけど、いつまで経っても裕介くんの姿を目にする事は無かった。


『仕事に戻る事になりました』って書いてあったのに、おかしいなぁ…。


入り口まで行ってみようか…そう思ってハッと気がつく。


「…この格好は、ない…かな。」


泣きはらした顔を隠す事しか考えて無かったから、シャワーも浴びず、髪を結んで軽く化粧を直しただけで外に出て来てしまった。



カットソーにスキニー、パンプスといったいつもの格好は、動きやすさを重視している分だけカジュアルな雰囲気になってしまっている。



『Felicita』はカフェダイニングだからドレスコードなんて無いけど、本格的なコースメニューで営業している今の時間には、自分の格好は不釣り合いに思えた。
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