恋がしたい。ただ恋がしたい。
接客に関わる人では無いのだろう。エプロンなどは身につけておらず、シンプルなシャツにタイトスカートを合わせていた。
とても綺麗な人だ。色白な肌も、涼しげな二重の目元も、丁寧に口紅が塗られた艶のある口元も全てが整っている。
ごく普通の格好をしているのに、きちんとして見えるのは、そんな彼女の雰囲気のせいもあるだろう。
だけど、私に向き合うその態度は、決して好ましいものには思えなかった。
私が名乗って、それから友達だと言った所まで後ろで話を聞いていたのに…。何だかさっきの男の子よりもよっぽど失礼な態度に思えた。
「…ふふっ。あなた、無表情に見えて、思った事が目に出やすいのね。『失礼な人』って、思いっきり出てるわよ。確かに、名乗らないのは失礼だったわね。」
「私、ここのオーナーの菅原和希の妹で、菅原有紗(すがわら ありさ)と申します。店ではマネージャーで通ってますけど、普段はオーナーの秘書として働いているの。ふふっ。…あなたよね、今裕介と『同居』してるカオリちゃんって。裕介の『お姉さん』の『お友達』の。」
何が可笑しいのか、ずっとクスクス笑いながら話をしている。
わざわざ同居と強調したり、お店の子が居なくなって二人っきりになった途端に裕介くんの事を裕介、と呼び捨てにしたり、私の事をわざわざ紫の友達だと持って回ったような言い方をするのも、全部気に入らない。
もやもやと黒い感情が胸の中に渦巻いていく。その正体を考えるよりも先に、菅原さんが信じられない言葉を口にした。