恋がしたい。ただ恋がしたい。
「裕介を支えるのは、あなたじゃない。私の役目よ。私なら彼の夢を叶えてあげられるわ。」
裕介くんの夢って…
和希さんみたいになる事…だよね?
そっか…。和希さんの妹で、和希さんの仕事を側で支えているこの人と一緒になれば…『Felicita』以外の自分のお店を独立して持つ事ができるよね。
「あなたに何ができるの?裕介を一生ウェイターのままにしておきたいの?分かったら、彼の部屋からとっとと出て行って。」
確かに私じゃ、裕介くんの夢は叶えてあげられない。何の役にも立たない…。
彼女の言葉にとどめを刺されたように、力を失った身体がグラリと揺れた。
「…で?忘れ物って何なの?」
彼女は立ちすくむ私に見向きもせず言いたい事だけ言うと、勝ち誇ったような仕草で早く寄越せと言わんばかりに手を伸ばしてきた。
色白で華奢な腕だ。すらりとした指先から伸びる爪には綺麗にマニキュアが塗られていた。
ずっとバスケをやってきて、今は毎日子供達と一緒に遊んだりして、無駄に鍛えられて逞しい自分の腕や指とはまるで違う。
そう思って項垂れた瞬間、彼女の方からふわりと甘い香りがした。
どこかで嗅いだ事のある香り…
記憶を辿って、その時の事を思い出すと、心臓がギュウッと嫌な音を立てて軋んだ。