恋がしたい。ただ恋がしたい。

翌朝目が覚めて頭痛は治まっていたけど、頭の重苦しさは取れなかった。


泣きはらした目の回りが痛い。


暫く鏡を見ながらぼんやりとして、今日は月曜日だった事に気がついて慌てて支度をした。


夏休みだって休みなのは子ども達だけで、教師はいつも通り出勤しなくちゃいけない。


しかも今日は、いつもより20分は遅れてしまっている。


朝は余裕を持って出勤しているから、これくらい遅れたってどうって事は無い。だけど、毎朝同じ時間に同じ手順で支度が出来ない事が私には確実にストレスになる。


リビングに出ると、カーテンなどは全て開けられていて、ローテーブルにはお粥が用意されていた。


『お願いだから、少しだけでも食べて。』


そんなメモと一緒に。



…ズキッ。


こめかみの奥側から少しずつ痛みが蘇って来そうになる。



リビングにも、キッチンにも、もう裕介くんの気配は残っていない。既に出掛けたようだった。



「…これ、いつから準備してくれてたのかな。」


私が裕介くんを避けている事をたぶん分かってて…分かってるのに、私が出勤の準備をする時間に合わせて用意してくれたんだ…。




…ズキッ。


お粥を冷蔵庫に入れ、目の前にあった水のペットボトルを掴んだ。そして鞄から頭痛薬を取り出して飲みこみ、一気に流し込んだ。


心配してくれて嬉しい。だけど、苦しい。


矛盾した気持ちを抱えたままで、裕介くんの優しさだけを受け入れてしまったら、どんどん自分がダメになってしまいそうな気がした。


目は腫れぼったいし、ちゃんと眠ったのに目の下にはクマができていて化粧のノリも悪く、体調は最悪だった。



だけどこんな…失恋したくらいで休んでなんていられない。


塞ぎこむ気持ちに無理やり蓋をして、急いでマンションを飛び出した。
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