恋がしたい。ただ恋がしたい。
そんな志田ちゃんは、さっきよりも数倍微妙で気まずそうな表情をしていた。
そして少しだけ屈んで声を潜めながら「ココ……付いてますよ。」と耳元に囁いてきた。
ちょん、と志田ちゃんの指先が軽く左の首筋に触れると、ようやく言っている事の意味が分かり、カアッと頬が熱を持った。
「分かりました?」
「………はい。」
さっき純くんが志田ちゃんを呼び寄せたのは、コレを隠せって事だったのか…。
150センチそこそこしかない志田ちゃんが、170センチ以上ある私の首筋に目が行かないのは分かる。私より10センチ以上背が高い純くんがコレに目が行ったのも、見つけても隠す手段が無い事も分かる。
分かるけど……コレを耳打ちされていたのかと思うと、死ぬほど恥ずかしい。
ようやく大人しくなった私に苦笑いをすると、志田ちゃんは手に持っていた化粧ポーチからコンシーラーを取り出した。そして、紅い痕が付いているだろうその場所に手早く塗った。
「…志田ちゃん……ごめん。」
「そんなに恥ずかしがるくらいなら、これくらいちゃんと隠してから来てくださいね。付けられた事くらい何となく分かるでしょう?…あと、ここもついでだから塗っときます。」
志田ちゃんは首筋のコンシーラーを伸ばし終えると、青く染まった目の下にも同じようにコンシーラーを塗ってカバーしてくれた。
「これでよし、と。…で?土曜日に何があったんですか?昨日はずっと泣いてたんですか?」
志田ちゃんのリスのようなクリっとした目が、じっと私を見つめている。
何で…土曜日限定?
「ちょっと場所変えましょうか。どうせこのままじゃ崎ちゃんセンセー仕事にならないし。大村先生には、許可もらってますしね。」