恋がしたい。ただ恋がしたい。
亨から逃げてばかりいた私に、自分の気持ちをちゃんと伝えるチャンスをくれたのは志田ちゃんだった。
…あと、話合いの場でやっぱり逃げ出しそうになってしまった私に勇気をくれたのは裕介くんなんだけど…
裕介くんの事を少しでも思うと、無理やり止めたはずの涙がまた溢れ落ちそうになってしまう。
…頭が重い。
流れ落ちるはずの涙がたまっていくみたいに、頭の中が重く苦しくなっていく。
「さっ、じゃあ本当に備品買って帰らないとそろそろ大村先生に怒られそうなんで買い物して帰りましょうか。」
黙りこんでしまった私に、志田ちゃんは明るく声を掛けてくれた。
たぶん『Milkyway』での話し合いの事を、志田ちゃんは望さんから聞いているんだと思う。裕介くんが現れた事だって、知っているはずだ。
だけど、今朝からの私の様子を見て色々と気を遣ってくれたらしい。
『…じゃあ別れ話が原因じゃなかったら、どうして泣いたんですか?』
彼女の顔にはそう書いてあったけど、それを口に出すことはしなかった。
***
「おい、お前ら遅いぞ。どこまで買い物行ってたんだよ。」
「すみませーん、なかなか見つからなくて。ね、崎ちゃんセンセ?」
…この会話も打ち合わせ済み?
志田ちゃんから話を聞いた後だと、こんな普通のやり取りですら、わざとらしく感じてしまう。
「……大村先生、木村先生、修繕するとこありました?」
もうすぐ昼だ。
丸々午前中サボってしまった分を早く取り返さなきゃと、白々しい会話をばっさり切ってやった。
「えーと、志田は木村と一緒に校内の点検した所の修理に当たって。分かんないとこがあったら木村に聞いてくれ。俺と崎山は校庭の方に行くから。ほら行くぞ、崎山。」
純くんは口を挟む隙も与えず、さっさと歩き出してしまった。