恋がしたい。ただ恋がしたい。
少しして私の鞄を持って戻って来た純くんに「ありがとう。」と言って手を差し出したけど、純くんは鞄を手に持ったまま渡そうとしなかった。
「何か、そのまま自分の車で帰るって言い出しそうだから渡さない。」
人質のように鞄を抱え、「ほら、行くぞ。立てるか?」と、差し出した私の手を掴みながら支えるように立たせてくれた。
…あったかい。
記憶とは違う、温かな手の感触に驚いた。
「冷たっ。…お前絶対貧血だぞ、これ。…はぁ。何でこんなになるまで…ったく。」
何が不満なのか、ムスッとした表情のままでぶつぶつと文句を言っている。
それでも支えたままの手は離されず、そのまま手を引かれて駐車場まで歩いて行った。
「乗れよ。」
促されて後部座席のドアに手をかけようとしたら、「後ろじゃ急に具合悪くなってもすぐ助けられないだろ。」とやんわりと止められ、そのまま強引に助手席に乗せられてしまった。
「裕介のマンションまで送ればいいんだよな?」
ほんとうは帰りたくない。でも今の私にはあのマンションしか戻る所がない。
項垂れるように頷いた私に、また純くんは深いため息を吐いた。