恋がしたい。ただ恋がしたい。

違う、と思った。

だけど、彼女…有紗さんの言葉も否定できない自分がいる。

…この感情を…どう伝えたらいいのか分からない。


とっさに口から出たのは中途半端な言い訳だった。


「違う…違うの。私が裕介くんの優しさに甘えちゃったからー」


「香織。」


ビクッ、と肩が跳ねる。


紫の目が言い訳なんて許さないって言っている。


綺麗な顔を不機嫌に歪ませて、彼女は本気で怒っていた。


「うちの弟バカにしないで!裕介はそんな中途半端な事、絶対にしない。優しいのは否定しないけど、優しさや友情を盾にして…手を出したりとか、そんな風に人の気持ちを粗末に扱ったりなんかしない。一途なヤツなんだから。」


「…香織は裕介よりもその女の言うことを信じるの?裕介には何も聞かないで?…じゃあ、裕介の気持ちはどうなるの?そんな気持ちで告白したって、すぐにここを出ていく気なら、結局香織は逃げてるだけじゃない。また一人で抱え込んで苦しむの?」


バカだね…そう言いながらもさっきまでの厳しい視線は消えて、私を見るその表情は優しいものに変わっていた。


「……香織は昔からちっとも変わってない。他人(ひと)の為には戦うくせに、自分の事になると強く出られなくて、損してばっかり。もっと自分の気持ち大事にしなよ。周りのしあわせよりも、自分のしあわせを考えて。自分の気持ちを優先しないと手に入れられないしあわせだってあるんだよ。」


「私は、香織にしあわせになって欲しいの。…裕介じゃなくてもいいけど、ちゃんと恋をして香織が心から大好きだと思った人としあわせになって欲しいのよ。……まぁ、それが裕介とだったら、姉としても友達としてもこれ以上の喜びはないんだけどね。」
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