恋がしたい。ただ恋がしたい。

「香織ってば昔っから恋話って言っても付き合い始めたとか、もう別れたとかそんな話ばっかでしょ?純くんの事だって、高校の時なんて全然好きだって教えてくれなかったし、付き合ってた時だって別れてから『実は純くんとちょっとだけ付き合ってたの』って言われたじゃない?そういう話が苦手だってのは分かるし、素面じゃ全然恋愛話ができないのは知ってるけどさ、怖がって後悔してばっかじゃ香織はいつまで経っても前に進めないよ。……3年前と同じになってもいいの?」



……3年前って、春の…あの日の事だよね。



小山奏一に辛辣な言葉を吐かれて、純くんのアパートから追い返された次の日、心はボロボロだったけど、いつも通り私は何事も無かったかのように出勤した。



小山奏一に……そして、話が伝わっているはずの純くんにだけは弱った所を見せたくない。その一心で。


だけど純くんは入院していて、そのままGWの休暇に入ってしまった。


突然想いを断ち切られたのを認める事もできず、ピンと張りつめた心をゆるめる事もできず、どこにも行く気にもなれずに、ただ日々は過ぎていった。


GW後半、紫からメールが届いた。


『生きてる?』


そのたった一言のメールを見ただけで、紫が私の失恋を知ったのだろうと悟った。


『身体はね。』


私もたった一言だけメールを返した。


だって、心は死んでいたんだもの。
< 178 / 270 >

この作品をシェア

pagetop