恋がしたい。ただ恋がしたい。
「ほら、顔上げて。香織ちゃん。」
導かれるように顔を上げると、自然と見つめ合う形になった。
視線を交わすと、フフッと優しく裕介くんが笑った。
それだけで心がふわり、と温かいもので満たされていく。
裕介くんの笑顔は、不思議。
意地っ張りで頑なな私の心を、あっという間に解して、温めて、満たしてくれる。
ーー好き。大好き。
伝えたい想いが心の中に溢れて、形になって唇から溢れ落ちる瞬間……
「……ねぇ、香織ちゃん。僕、今結構大切な事伝えたんだけど、分かってる……よね?伝わってるよね?」
ーー私が『好き』と伝えるよりも先に裕介くんが私に『何か』を伝えたと教えられた。
***
「……はっ?」
予想もしていなかった言葉に、思わず間の抜けた声が出た。
大切な事?
しかも、結構大切な事?
……どうしよう。
私……また自分の気持ちばっかりで先走って、裕介くんが伝えたい大切な何かを聞き逃しちゃったんだ……。
さっきまでの会話を必死に心の中で反芻する。
「えっと……仕事を休ませたって気にしなくていいって言ってくれた……事?」
「それも大切だけど……その次。」
「……えっと……客商売だから、お休みはちゃんと取れない…って?」
「………その次。」
段々と裕介くんの目の温度が下がってきているような……気がする。
口元だけは笑顔のその表情が、さっきの紫の顔と似てて……やっぱり血が繋がってるんだなって……