恋がしたい。ただ恋がしたい。

紫には特に、と念を押した裕介くんに苦笑いを返す。

「だからね、最近は『Felicita』以外の仕事で忙しかったんだ。オープンに向けて準備しなきゃいけない事がいっぱいあったからね。」


確かに、前は仕事上がりでも飲みに誘えば付き合ってくれていたけど、一緒に住み始めてからは早出の日でも帰りが遅かったり、休みの日でも仕事に出掛けたりしてたっけ…でも…。


「裕介くんが『Felicita』を離れるのと、有紗さんが私に嘘をついたのと何の関係があるの?有紗さんは、どうして私に裕介くんと付き合ってるみたいな言い方をしたの?」


「……ごめん。それはね、僕があんまり分かりやすく浮かれてたから面白く無かったみたいなんだ。有紗さんはね、僕と同じで…まぁ、多少ブラコンは入ってるんだけど、和希さんみたいに自分のお店を経営する事が目標なんだよ。青木さんとは同い年だし、独立する時には自分がマネージャーとして呼ばれるんじゃないかって…思ってたみたいなんだよね。」


頬を赤らめながら話す裕介くんを不思議に思う。私ならともかく、いつも穏やかであまり感情の起伏を面に出さないタイプの裕介くんが、そんなに誰の目から見ても分かるほど浮かれるなんて…


「裕介くんは、マネージャーになれるから嬉しかったの?」


「それもあるけど……青木さんが『Felicita』から独立するのは、最初和希さんから聞いたんだ。マネージャーとしてお前も一緒に独立してみないかって言われたのも、和希さんから。和希さんに認めてもらえたと思って嬉しかったし、青木さんにもパートナーとして声を掛けてもらえたのも嬉しくて。よし、頑張ろうって思ってオープンに向けて動いてた時に、もう一つ嬉しい出来事が起こったんだ。……浮かれたのは、そっちの方だよ。」
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