恋がしたい。ただ恋がしたい。
「そんな時だよ。突然香織ちゃんからアイツと別れたって聞いたのは。」
「あんな酷い目に遭ったのに、何でも無いように淡々と話してて。…だけど泣き出しそうな目をして落ち込んでる香織ちゃんを見てたら……もうダメだった。僕は何で今まで香織ちゃんが幸せならそれでいいって思ってたんだろうって。」
「もうこの先誰とも恋ができない、誰かを好きになるのも怖いって言って悲しんでる香織ちゃんに、あなたにずっと恋をしてた人がここにいますって。例え受け入れてもらえなくても、それだけは、自分の気持ちだけはちゃんと伝えたいって。…そう決心したんだ。」
「そこから先は…もう香織ちゃんも分かると思うけど…ずっと好きだった人と一緒に暮らせる事になって、しかも紫ちゃんの結婚が決まって、二人きりで暮らす事になって…………」
『…………浮かれないほうがおかしいでしょ。』
最後は耳元で喋っているはずなのに聞き取れないくらい小さな声だった。
裕介くんは私の肩に顎を乗せたまま、はぁ、と深く息を吐き出した。Tシャツごしに背中に感じる手の感触は、緊張しているからか少しだけ熱を持っていて、彼が言っている話は決して嘘なんかじゃないんだって事が分かる。
その話が本当なら、裕介くんはいつから私の事を好きでいてくれたんだろう。
…浮かれたそぶりだって、私の前では一度だって見せた事は無かったのに。
「だから、有紗さんの事は完全に誤解。……分かってくれた?」
「………うん。」
裕介くんの真剣な声を聞いて、思わずコクリと頷いてしまっていた。
だけど、裕介くんはため息をつきながら「まだ納得してないでしょ?」と言ってきた。
鋭い指摘にドキッとする。
「何回でも説明するから、引っ掛かってる事は全部話してよ。ねっ?」
少しだけ身体を離して、顔を傾けて様子を窺うように私の顔を佑介くんが覗きこむ。
そんな綺麗な目で、じっと見つめてくるのはずるいと思う…。