恋がしたい。ただ恋がしたい。

その暖かい言葉にほっとしたのもつかの間、


「全く迷惑かけられなかった訳でもないのに、いい人ぶって…。まぁ…今度はここを『こんな店』呼ばわりする失礼な男(ヤツ)と待ち合わせなんかしないでくれたら許してやるよ。」


「奏一!」と陽介さんにたしなめられながらも、私に向かってニヤリと笑いながら言ったその言葉に目を丸くする。




ー『だからさ、そうやって素直に感情を見せてくれたらわざわざ俺がこんな店まで来なくても良かっただろ。』



確か『Milkyway』を『こんな店』と言ったのは亨だ。


それは…つまり…。


「ああ。全部聞いてたけど。そこの裏で。」


言葉の出ない私に向かって、小山は面白くて堪らないといった顔でニヤニヤと笑いながら、この前亨との話合いの時に座っていた席を指差した。


あっさりとあの場に居たことを白状されて、思わず顔が引き攣ってしまう。


「文句なら、裕介に言えよ。志帆や陽介さんまで付き合わされたんだ。感謝されても、文句を言われる覚えはないからな。」


「いやいや。付き合わされたなんて思ってないよ。なかなか面白かったし。」


「陽介さん、心の声が漏れちゃってます。それ全然フォローになってないですよ。」


小山に陽介さんに紫。三人がわいわいと談笑している横で、私だけが動揺してわなわなと唇を震わせている。


人の…真剣な別れ話を…しかも、軽く修羅場になりかけていた話し合いを…付き合わされただの、面白かっただなんて…みんな、信じられない!
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