恋がしたい。ただ恋がしたい。

「高校の時って、私達まともに話した事あったっけ?」


私の問いかけに少しだけ困ったように眉を下げて裕介くんは微笑んだ。


「まともに話したも何も、今僕がこの仕事をしてるのって、香織ちゃんと話した事がきっかけなんだけどな。」


「……そう、なの?」


『Felitita』での裕介くんはキラキラ王子で、スマートで、身のこなしだって完璧で、何よりこの仕事が大好きなんだって、生き生きと働いている姿からいつも伝わってくる。


その大好きな仕事に就いたのが、私との会話がきっかけだったなんて。


裕介くんの大切な人生の選択に私が関わっていたっていう事実はとても嬉しい。



……たとえそのきっかけを、その会話を私が全く覚えていなかったとしても。



「ふっ、本当に香織ちゃんは分かりやすいね。」


思いっきり目が泳いでいるに違いない私の顔を見て、裕介くんはニコニコと嬉しそうに笑っている。


「……ごめんね。」


「大丈夫。ほんとにね、そんなにたいした話じゃないんだ。だから、覚えてなくても無理ないよ。」


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