恋がしたい。ただ恋がしたい。
後は素早く中に入ってすぐにドアを閉めてしまえばいい…
そう思って鍵を開けようとしたのだけど、何故か鍵が回らなかった。
「…えっ?」
おかしいな…と思いながら反対側に鍵を回す。
カチャン、と乾いた音がして鍵が『かかった』。
その音を聞いた瞬間に血の気が引いていった。
「香織ちゃん、どうしたの?」
急に動きを止めてしまった私に裕介くんが声をかける。
「…鍵が…開いてた、の。」
震えを押さえて、ようやく声を絞り出した。たぶん顔色は真っ青になっているに違いない。
「…香織ちゃん、携帯出して。鍵を貸して。僕が先に部屋に入って確認するから、誰かいたらすぐに警察に電話するんだよ。」
裕介くんは、固まって動けない私から鍵をサッと奪うように取って鍵を開けると、先に部屋へと入って行った。
慌てて鞄から携帯を取り出して、裕介くんの後に続いて部屋に入る。
月明かりに照らされて、ぼんやりと部屋のシルエットが浮かび上がった。
…特に荒らされた様子はない。朝に家を出た時のままのように見えた。
「香織ちゃん、電気点けてくれる?」
「ーあ…うん。」
パチン。
パッと明るくなった部屋に誰も居ない事を確認して、思わずホッと息をついた。