恋がしたい。ただ恋がしたい。
「分かってるなら、わざわざ言わないでよ…。」
裕介くんが思っている通りだ。
私はこの10日間、ここにあるソファーで眠っていた。
亨の裏切りを知ったその瞬間から、ベッドに横になるどころか、近づくことすら嫌になってしまったからだった。
まぁ…ソファーでいちゃいちゃした記憶も全く無い訳では無かったけど…『いちゃいちゃ』そのものを致したベッドで眠るよりは、よっぽどマシだ。
「だからちょっと嫌な事があったくらいで外に飲みに行きたくなっちゃったんでしょ。それってここに帰って来たくないからだよね?…香織ちゃんはどうでもいい愚痴は散々言うくせに、どうしてほんとうに辛い事は言わないんだろうね。」
ほんと意地っ張りだよね、と裕介くんがため息をついた。
「…だって、情けなくて。」
浮気されてる事も気がつかなかったくらい鈍感なくせに、部屋で過ごす時間がとんでもなく苦痛になってしまったとか、亨と散々愛し合ったベッドに眠れなくなってしまったとか…情けなくて恥ずかしくて誰にも言いたく無かったんだもの。
「後さ、他にも持ってかれた物は無い?服だけじゃなくてさ、ちゃんと調べておいたほうがいいよ。」
「そ…んな、まさか。」
「まさか、じゃないよ。こんな泥棒まがいの事までされて、まだアイツの事信じてるとか言わないよね?」
信じたいとかそういう話じゃない。そんな事をするヤツとそろそろ結婚をするかもしれない、なんて夢見ちゃってた自分が情けないだけだ。
裏切られて悲しいとか、腹立たしいとか、そんな感情はもう全く無くなっていた。
そう。ただ、ひたすらに情けなかった。