恋がしたい。ただ恋がしたい。

「あっ…」


開けっ放しのクローゼットからベッドサイドへと視線を移した時、数時間前まで確かにそこにあったものが無くなっているのに気がついた。


「『crown』のアルバムが無い!!」

『crown(クラウン)』は私がインディーズの頃から大好きなバンドだ。

今まで出したアルバムが5枚。それとインディーズ盤まで、全てキレイに無くなっていた。


「信じられない!!もう手に入んないやつもあるのに!!」


頭から湯気が出そうなくらいの怒りに震えている私に、呆れたように裕介くんが口を挟んだ。


「まず最初に確認するとこがそこ?…通帳とか、判子とか、指輪とかは?貴重品とかしまってある所、まさか教えたりしていないよね?」


「…確認します。」


他に盗られた物は無い?って言うから部屋をざっと見渡しただけなのに…いちばん最初に『crown』が目についたからってそんな呆れた声で言わなくてもいいじゃない!


裕介くんだって『crown』のファンだから、どんなに私が悲しいか分かるはずなのに!


ふんっ、と鼻息を荒くしながら、クローゼットに頭を突っ込んで、奥にしまってあるパーティーバッグを掴んで引っ張り出す。この中に通帳がしまってあるのだ。


「…あった。無事。」


アクセサリーは、元々アレルギーがあるのでそんなに持っていない。念のため調べたけど、全て無事だった。
< 40 / 270 >

この作品をシェア

pagetop