恋がしたい。ただ恋がしたい。

『crown』のライブ見に行かなきゃよかったな…と、心の中で密かに後悔する。

あるCMに曲が使われてからというもの、ライブのチケットもすぐに売り切れてしまうほど人気が出てしまい、こんな田舎にまで来てくれないようなバンドになってしまった。


ライブを見に行きたい!と思えば都会に行かなくちゃいけないし、チケット代の他にも余計な出費がかさむ。


「ほんと、私も引っ越したいですよー。」


実家住まいだった志田ちゃんは、結婚を期に旦那さんのアパートに移り住んだけど、元々単身者用の間取りのアパートだから少々手狭なようで、事あるごとに引っ越したい!と口にしている。


「引っ越しってお金かかりますよね…。しかも、友達から急に結婚するからって連絡が来たんですよ!」


「あー、ご祝儀。それは痛いね。お友達だったら結婚式にも呼ばれるしね。」


「小、中の同級生なんですけど、訳アリみたいで結婚式はまだ考えてないって。…あっ!崎ちゃん先生、『引っ越したい』ってひょっとして、結婚するからですか?!いきなりお祝いちょうだい、とかはナシですよ!」


志田ちゃんは元々同じ教育大の後輩だ。


在学中は直接繋がりは無かったけど、よくよく辿っていくと共通の知り合いがいたりして、全く無関係な訳でもない。


私が同級生で同じ教職についている人と付き合っていた、って事も彼女は知っているのだ。


…まぁ、私が話したんだけどね。


順調な付き合いをしているうちは良かったけど、別れてしまうと途端にこんな感じにめんどくさい事になってしまう。
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