恋がしたい。ただ恋がしたい。
パティシェのコイツは普段は厨房にいるから、知り合いが来ても手を振るくらいで、店内まで顔を出す事はめったに無い。
ここまでやって来て会話をしているなんて、なかなかレアな光景じゃないかと思う。
だけどね、そこの目をハートにして小山を見ている女の子達一人一人に教えて回ってあげたい。
…こいつはとんでもなく黒ーいオトコだよ、と。
「これ以上は質問は受け付けません、って感じかな。」
ニコリ、と爽やかな笑みを浮かべながらさらりと言った一言で、辛うじて保っていた笑顔すら消えてしまった。
分かってるならわざわざ言わないでよ。
だいたい、同棲じゃないし。同居だ、同居。ルームをシェアしているだけだ。
そもそもコイツに報告する義理もない。
「紫、籍入れるのいつ?」
もう私との会話は無理だと判断したのか、ヤツはあっさりと話題を変えた。もともと私に興味も無いくせに、ついでのように話かけたりしないで欲しい。
「もう入れたけど。」
「はぁ?お前、教えろよなー。式はまだ挙げないんだろ?ならココ貸しきりでお祝いするからな。奈緒ももうすぐ子どもが産まれるし、身動き取れなくなる前にみんなで集まりたいだろ?旦那さんの都合も聞いとけよ。…崎山も来るだろ?」