恋がしたい。ただ恋がしたい。
『おいでおいで』と手招きをしながら、グラスを取りに行こうと立ち上がろうとした私を、裕介くんが片手を広げてやんわりと止めた。
「お付きあいします、と言いたいとこだけど今日はやめとこうかな。」
「えー??なんで!?」
裕介くんだって明日はお休みだからいいじゃない!
思わずぶーぶーと口を尖らせながら「のもうよー!」と文句を言うと、
「そんな可愛い顔してもダメだからね、香織ちゃん。飲んでたらいつの間にか寝ちゃってたんでしょ?…だったら、これ以上飲んじゃダメ。明日絶対に二日酔いになるから。それでもいいの?」
と、逆に釘を刺されてしまった。
「うっ…。」
普段はざるって言われるくらいお酒に強い私だけど、ごくたまーに二日酔いになる時がある。
それは大抵この姉弟のどっちかか、もしくは二人と飲んだ翌日になる事が多いんだけど。
眠りこけてしまうほどの深酒をした翌日は、かなりの確率で起き上がれないほどの二日酔いに苦しめられる。
やっぱり今また飲んじゃまずいかなぁ。でも、この前ここで飲んだ時だって眠っちゃったけど、大丈夫だったし。ちょっとくらいなら大丈夫じゃないかなぁ…。
諦めきれずに、そーっと視線をグラスに向けると、それを遮るように裕介くんがにっこりと笑いながら隣に座ってきた。