恋がしたい。ただ恋がしたい。
「で?何があったの?」
「…。」
何があったの?って聞かれても困る。
だって、本当に何も無い。
飲みたくなるのが男関係の事だって指摘されたのなら、なおさらだ。
今日は、ほんとうに楽しく過ごしたんだから。
紫と会ったのもココを出て以来だったし、『MilkyWay』のケーキも美味しかったし(小山にはむかついたけど)、入籍した時に二人で婚姻届を持って撮った写メを見せてもらったりして、今度はウェディングドレスが見たいから早く式を挙げてね!なんて言ったりして…。
…だから。
「なにも…なかった…よ?」
心当たりなんて無い。
だけど、今私は『飲もうよー』って二人に電話する時と同じくらい困って情けない顔をしているような気がする。
裕介くんは、そんな私をじっと見つめながら、残っていたグラスの中身をゆっくりと飲み干した。
「…うん、美味しい。」
そして唇に残った名残まで味わうかのようにゆっくりと唇を舐めてから、ふわりと微笑んだ。
「…よく考えてごらんよ。ねっ。」
その微笑み方はまるで、『何でもないよ』と言ったのは嘘だよね、と言われているかのようだった。
少しだけ口角の上がった艶やかな唇に惹き付けられるように、自分の心臓がドクリと音を立てて反応したのが、はっきりと分かった。
何か含みを感じさせるようなその微笑みが、間近で絡めるように向けられた視線が、私の心を掻き乱していく。
「…やだ。」