恋がしたい。ただ恋がしたい。
私は考える事を放棄した。
これ以上裕介くんを見ていたら、心の中にしまいこんだ感情が堰を切って溢れだしてしまうような気がする。
それだけは絶対に…ダメだ。
「はぁ…香織ちゃんは、ほんとに意地っ張りだね。」
「えっ、はっ?…きゃっ!」
ため息混じりに囁かれ、腕を掴まれたかと思ったらグッと引き寄せられた。
次の瞬間、私は裕介くんの腕の中にすっぽりと収まっていた。
腕の中って言うか…足を伸ばして座っている裕介くんの足の間に入り込んで、後ろからギュッとハグされちゃってる仕上がりになってるんですけど…
「ゆ、ゆ、ゆ、裕介くん!?」
あまりの密着度に、一気に酔いも醒めて完全に焦った私は、しどろもどろになりながら後ろを振り向こうとした。
その時、「はい、こっち向くのは駄目ー。ちょっとでも可愛い顔見せたら、このまま襲っちゃうよ。」
ポンポン、と私の頭に手を置きながらサラリととんでもない冗談を言うもんだから、慌てて前に向き直った。
動揺は止まらず、心臓はドクン、ドクンと痛いくらいに音を立てて騒いでいる。
意地っ張りなのは認めるけど…どうして私は裕介くんに抱きしめられているの?
こんなの…友達にするようなハグじゃないよね?
心の中はぐちゃぐちゃでパニックを起こしていたけど、
それでも、背中ごしに伝わってくる裕介くんの体温だけはあたたかくて、心地よくて…
その温かさに仕舞い込んでいた感情が解けて、少しだけ、するりとこぼれ落ちて来てしまった。