恋がしたい。ただ恋がしたい。
『相談に乗って』と飲みに誘い、その度に断りづらい理由をくっ付けては側にいた。
そんなある日の金曜日、二人で飲んでいるところに奈緒子ちゃんが偶然居合わせた事があった。
ーー『忙しい時期なんだから…体調悪いんだったらあまり飲まない方がいいよ。』
純くんが見知らぬ女といる事に嫉妬をする訳でもなく、驚いている様子もなく、彼女は一言だけこう言って帰って行った。
…なんだ、やっぱり奈緒子ちゃんは、まだ小山くんの事が好きなんだ。
小山くんがパティシエになった事は知っていて、紫と一緒に何度か『Milky way』に行っていたし、そのお店のオーナーと婚約をした事も、紫から聞いて知っていた。
必要以上に干渉して来ないその態度を、小山くんにまだ愛情があるのだと、そして純くんに対して愛情は無いのだと、私は勘違いをしてしまった。
……私は何も分かって無かった。
幼なじみって関係は、死ぬほど面倒で、ややこしくて、首を突っ込んだり、巻き込まれたりすると大変な目に合うんだっていうことを。
小さい頃、何度か転校を繰り返し、幼なじみと呼べる存在がいなかった私にとって、男女の幼なじみの微妙な距離感と、微妙な愛情なんて教えられたって理解できるものじゃなかったのだ。
奈緒子ちゃんが、私に向かって素直に嫉妬の感情を見せてくれていたのなら、まだ私はこんなに傷つく事はなかったのかもしれない。