恋がしたい。ただ恋がしたい。
「ちょっとだけ話してもいいかな?」
「すぐ戻るから、手短に済ますわ。」
今さら都合よく現れた彼女に怒りと嫉妬の感情が沸いて、気がついたら話しかけていた。
部屋を逃げるように飛び出して来たのは見ていたし、少しだけ青い顔色をしていたのが気にかかったけど、二人でどんな話をしたのかなんて聞きたくなかった。
昨日と同じ服装だから、一晩中付き添っていたのは奈緒子ちゃんも分かっているだろう。だから、わざと純くんの部屋にいたのは私なのだと、いるのが当たり前の関係なんだと主張したかっただけだ。
純くんが求めているのが目の前の彼女だけだというのは、嫌と言うほど分かっている。
だけど、どうしても負けたくなかった。
「純くんのこと、振り回さないで。」
小山くんの事が好きなくせに。
純くんの気持ちを知りながら応えず、でも側にいる奈緒子ちゃんはずるい女(ひと)だ。
ーー『あなたには関係のないことだと思いますけど。』
自分は純くんと付き合っていたと、そう言ってもなお顔色一つ変えずにこう返した彼女に、私は言ってはいけない言葉を放った。
「もう純くんに関わらないで。小山くんに振られたから、次は純くんにしよう、なんて都合のいいこと思ってないでしょうね?」
彼女は驚き、目を見開いた。
私が一方的に奈緒子ちゃんの存在を知っていただけで、彼女とは昨日が初対面だ。まさか私が小山くんの事を知っているとは思わなかったのだろう。