恋がしたい。ただ恋がしたい。

「私、今までのあなたたちの事を全部聞いたの。『幼なじみ』だからって特別じゃないのよ。彼の事好きじゃないならそばにいないで。」


たぶん私がただの元カノではなく、今も同僚以上の関係なのかと、彼女が疑うには充分な発言だっただろう。


「あなたは、もう純くんに相手にされてないの。」


小山くんの事を聞いたのは紫からだったし、あなたたちの関係なら高校生の時にこの目で見ていた。それだけの事だ。


だけど、嫉妬にかられた口から最後に出た嘘は、確実に彼女の心を傷つけた。


泣き出しそうな表情で帰った彼女に心が傷んで、このまま一緒に逃げ帰ってしまいたかったけど、純くんをどうしても放っておけなかった。


目が覚めるまで…熱が下がるまで…帰っていいって言われるまで…。


自分に言い訳をしながら、側にいるうちに、気がついたら週末が終わっていた。


まだ微熱があって、起き上がるのも辛そうな純くんを、今日は無理にでも病院へ連れて行こう…そう決心して、授業が終わった夕方急いでアパートに向かって…


アパートの前で小山くんとばったり会った。


「久しぶり」と笑顔で言いかけて、私を見るその凍てつくような視線に身体が固まった。
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