恋がしたい。ただ恋がしたい。

あぁ…私泣いてるんだ。


どうして?純くんに言われた事の…


一体何が悲しいと思ったんだろう…。


動揺する気持ちと溢れ落ちそうな涙を隠すように、気がついたら純くんに背を向けて、階段を駆け下りていた。


***


階段を下り切って、急いでハンカチを取り出した。


「また逃げちゃった…。」


気になるから話してと言って階段まで引っ張って来たのは自分なのに、逃げ出すなんて…。


もう、ほんとうに同僚としても呆れられたかもしれない。


ほんの少し前の自分の涙を後悔しても、振り返ることも戻る勇気も無い。



「あっ、崎ちゃん先生ー!」


「志田ちゃん…。」


「もー、スマホ置きっぱなしでどこ行ってたんですか?さっきLINE鳴ってましたよ。…って、あれ?目が真っ赤ですけど、どうしたんですか?」


まずい、泣きそうになってるとこなんて見られたくない。


慌てて目元をぐいっと拭った。


「ちょっと最近、目が疲れちゃうんだよね…。あー、痛いっ。いたたたたっ…。ちょっとトイレ行って見て来るねー。」


自分でも呆れるほど下手な嘘が口から出てしまった。


さらに純くんが階段を下りて来て、志田ちゃんに見られて、これ以上嘘を重ねることになりませんように…。そう祈りながらそそくさとその場を後にした。
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