好きも嫌いも冷静に

「澪?大丈夫?」

「はい…、大丈夫です」

腕の中に包まれていた。

「伊織さん、温かい…」

涙がこぼれた。

「…れ、い?泣いてるの?」

頷いた。

「何だか解らない。だけど、温かくて、涙が出るんです。嬉しくて…幸せなんだと思います」

「俺も幸せだ」

引き寄せられて抱きしめられた。また涙が流れた。

「澪…」

涙が流れた辺りにチュッ、チュッと口づけられた。それから、おでこに頭に。

「澪…、好き過ぎて困る…」

「…伊織さん。嬉しいです」

ギューッと抱きついた。

「わー、バカバカ、当たる…、澪の…。抱き着いたらムギュッて当たるから…。
もう…、朝だから我慢してるのに‥、煽らないでくれる?」

「伊織さん…もう、バカ」

またギュッと抱き着いた。

「澪…、だから、…もう、ダメだって…」

「キャッ、駄目、駄目」

体を反された。


「あのさぁ澪?まだ早いと思うかも知れないけど…、俺は澪と結婚したいと思ってるんだ。
そう思ってつき合ってくれるのは、難しいかな?俺は実は御曹司でしたとか、会社のトップでしたとか、そんななんのサプライズもない、ごく普通の人間だけど、…澪と一緒に居たい。
こんな俺じゃ、ダメかな?…先に言っておくべきだったかな、ごめん」

「伊織さん…いいの?そんな大事な事、簡単に口にして…」

「え?簡単にじゃないよ?よく考えた上で言ってる。
そりゃあ最近の急接近からの展開を思えば、早過ぎると思うかも知れないけど…。でも、最近初めて会った訳じゃない。…昔から知ってる。
人となりも解ってるつもりだよ?その上で言ってるんだ」

「私でいいのでしょうか?」

「…澪がいいんだ。澪じゃなきゃダメなんだ。…澪がダメだって言うなら、…俺は誰とも結婚するつもりはない」

「伊織さん…私は」

「澪?…、澪は一人じゃないよ?一緒に生きて行こう?俺と。いいよな?」

「…ダメです」

「えっ?れ、い…ダメ?」

「…聞いてはダメです」

「解った。…澪、俺と結婚するからな」

「はい」
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