好きも嫌いも冷静に

｢な〜んだ｣

｢…なんだよ｣

｢いやね‥、伊織も妬くんだなと思ってね。立派に恋してるじゃないか。そういうの、恋のうちだからね。
普段、シュッとして、ポーカーフェイスのくせに、冷静な振りして妬いてるんだな。
嬉しいと思うよ？妬いてくれるとね。
いいモノよ？解るように妬いてあげるのって｣

｢…もういいよ。俺の話はどうでもいいから。
それより、英雄はどうなんだ？やっぱり今のままの関係性がいいのか？｣

｢そうだな。…特に問題ない。今んとこ、変わりなく宜しくやってるから。いいんじゃないかな、今はこのまんまで…。俺、ただ今、大恋愛中だから。環に翻弄されるのは嫌じゃないから。
それより、部屋はどうすんだ？話、あのまんまだけど。まだ、いじったりしないのか？何だか、良さそうな話だったじゃないか｣

｢ああ、その事だけど。俺もしばらくはいいかな。今のままでいいと思ってる。
ほら、俺達は外目、スピード結婚だろ？｣

｢まあ、早いっちゃあ、早かったかな…｣

｢だろ？実際、どっぷり生活感て感じに、まだなりたくないんだ。
お互いよく知ってるけど、夫婦になり切らないうちに、ちゃんと…、もっと恋したいんだ、澪さんに。
結婚してて変な事言ってるけど…。誰にも取られたくないから入籍したんだ。でも、恋はこれからだ。解るか？｣

｢もう、いいから。解り過ぎる程よく解るよ。
…好きな人と、まだまだドキドキしたいんだろ？気に入ったんだ、ドキドキすることにさ｣

｢まあ、そんなところだ｣

…俺も頬をポリポリした。

｢顔見知りで人となりは解っていても、恋は始まったばっかりだもんなぁ。出来るドキドキはしなきゃ損だっつうの、勿体ない｣

｢ああ。やっぱり英雄はいい男だよ。俺、好きだよ？お前の事｣

｢いや〜ん、伊織、嬉しい｣

｢……。男と男としてだ｣

｢男と男とシテ？いや〜ん、伊織｣

｢もう、違う！都合よく文字を変換するんじゃない…。男として好きだと言ってる……待て！もう、いい。もう、何にも言うな、英雄｣

｢解ってる。男として好きなんだろ？｣

………返事はかなり難しい。