好きも嫌いも冷静に
(実花)
ブー…。メールだ。誰だろう。…あっ、嘘ー!……これって…嘘、本当!?
仕事中は駄目なんだけど…。終わるまでなんて我慢できない。
見るのはドキドキするけど…。
あ、…あ…、……そうだよね…。やっぱ無理だったか…唐突過ぎるもんね、よく知りもしない書店の店員なんて。でも……うん、何だかさっぱりしてて、嬉しい。
またお店に来てくれたら会えるし…。
優しいなぁ、無視せずメールをくれて。
…よし。
【メール有難うございました。
またのお越しをお待ちしております。
アドレスは削除しておきます。実花】
返信した。一度きりのやり取りだから、してもいいよね?
はあ、これで失恋、…だよね。
終わっちゃった…。
ブー…。……お、返信か。
…いい子だな。
「すまん、待たせてるな」
「あ、別に、大丈夫だ。忙しいのはいい事だよ。気にせず働いてくれ。普通に待ってるから」
「今日に限っては、なんで暇じゃないんだと思ってしまうよ」
「まあ、これ読んで、食ってるから。普通の客だから気にしないでくれ」
「コーヒー、お代わりサービスするから」
「ハハ、気にしないでくれ」
特に待ってるという意識にはならないから大丈夫だ。
「ふぅ…」
「もう大丈夫なのか?」
カップを手に英雄が前に座った。
「ああ、大方の注文は終わったから。後は簡単なものばかりだから、俺じゃなくてもいいんだ。寄ってくれって言っておいて待たせて悪かった」
「全然。お陰で帰ってやろうとしてたこと、大方済んだし」
雑誌を片付けた。気を持たせりつもりはない。話せないことは何一つない。
「えーっと、俺さー、環さんの事は、得意先の近くにある、蕪ら屋の女将さんだって事は知ってたんだ。たまに昼飯食いに寄った事があったから。店を知ったきっかけは、出汁の匂いだったんだけどね。ほら、あそこの店ってちょっと奥にあるだろ?通りの奥から匂いがしたんだ」
「出汁?」