好きも嫌いも冷静に


温かいな…。
ドキドキしてしようがない。益々加速するけど、それはこっちのことで、安心はしてくれてるだろうか…。
どうやら眠ってしまったようだ。
約束だ。
朝まで肩を抱き、一緒に居た。
微かに体に残る感覚、…ずっと温かかったな。

目が覚めた時はベッドだったなんて驚くかな。
テーブルにメモを置いた。

『ごめんね。グッスリ眠ったようなのでベッドに運びました。朝になったので帰ります。
勝手に鍵を借りて掛けておきます。
鍵はドアポストに落としてあります。美作』

コーヒーカップは洗っておいた。
あんな雰囲気になって…何もなかったなんて…大屋さんは。がっかりしただろうか。…はぁ、何もしなかった訳ではないけど…。

大屋さんの気持ちを知ってるだけに…、困らせると解って言ってるとは思ったけど…。

何度も言い換えたのは一緒に居たかったからだ。その気持ちは解っていた。
元気づけようと誘った事。カフェで一緒の時間を過ごして、嬉しそうに話し…、楽しくしていた…、もっと一緒に居たくなった。そうだと思う。誰だってそうだ、欲張りになったんだ。
怖かったのは嘘じゃない。
でもそれは誰だって怖いんだから。決して堪えられない訳じゃない…。
甘えたんだよな。甘えたかったんだ。
…きっと、無理しても、居てくれると思ったからだ…。卑怯だな。大屋さんのこと、こんな風に解ったようなことを…。だったら尚更だ。
いい人になってはいけなかった。

中途半端な行い、態度。後悔、させたかもしれない。好きにならなければ良かったって。
事件を理由にずるいことをしたって。
怖いと言えば、なんとか応えてくれるって。…応えるには応えた。でもそれはもっと先まで……ほしかったものにはならなかったって。こんなことなら言わなければ良かったって…。
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