オフィス・ラブ #∞【SS集】
「ソフトウェアってさ、企画から制作、テストまで、全部同じメンツでやるんだよ」
「工業製品としては、他にないな」
「だろ、唯一かかわらないのが、販売営業と広告宣伝てわけ」
「それで、この業界に来たのか?」
「そういうわけじゃ、ないんだけどね」
けど言われてみれば、そういうわけなのかもしれなかった。
開発をしている限り、もっとも遠い存在が宣伝と営業だった。
自分はそれに手を伸ばしたくなったのかもしれない。
「提案書、チェックお願いします」
「うん、見ておくね」
やれやれ、と堤は内心で息をついた。
この松岡という先輩社員は、好人物なんだけれど、どうにも要領が悪すぎる。
見ておくね、とデスクに積んだ資料に、次、手が伸ばされるのはいつだろう、と心配になった。
別に自分はそれでもいいけれど、ここは営業のバックアップ部門だろう。
時間単位で締切に追われている営業部に、こちらの都合で予定を遅らせるわけにはいかない。
けれどこの松岡は、スケジュールだけはきちんと守るのだった。
つまりどういうことかというと。
危ない橋を渡らなくなるのだ。
堤は面白くない思いを何度かしていた。
もう少し決断が早ければ、判断が的確ならば、できた企画もあったんじゃないか?
最大手の代理店で、クリエイターもライターも最高の人材がそろっているのに。
それをフル活用しないで、何が企画だよ。