オフィス・ラブ #∞【SS集】
都心の若者向けに、とにかく話題になり、モバイルを活用したプロモーションを、という営業からの依頼に応えて堤が提案した、駅貼りの特大ポスターの企画が評価を受けたことがあった。

ポスターを二枚構造のシールにしておいて、表は名刺サイズの切りこみを入れ、通行人が持ち帰れるようにする。

その裏にはQRコードを添付し、特設サイトに飛ばす。

それぞれの駅でコードを変え、流入経路も計測できるようにした。

すべてのシールがはがれると、新たなビジュアルが登場し、ファンを喜ばせ、話題を呼ぶ。


この企画も松岡に見せた時は、やれここが問題、あそこが心配、と非建設的な意見ばかりもらい、話にならなかった。

時間が惜しいので、マネージャーに直接持ちこんで、すぐ採用されたのだ。


悪い人物ではないことくらい、わかっている。

けど仕事場という戦場で、それはなんの免罪符にもならないというのが、堤の持論だった。



「言いすぎだ」

「お前と組めたらいいのに。そのほうがずっと効率的」

「俺たちみたいな新人同士が、組めるわけないだろ」



その頃はよく一緒に昼をとっていた新庄と、何度そんな話をしたかわからない。

それは心からの思いだったのだけれど、新庄は半分冗談と受けとったのか、いつも笑って流していた。

松岡をブラザーとしていた新庄は、彼に恩義を感じているらしく、甘い。

元々の、こいつの性格もあるんだろうと堤はあきれつつも、可愛いことだと思った。


こいつの能力で、あんなのがブラザーでは、一年間、さぞ物足りなかっただろうに。

それでもなお彼を先輩と慕い、チームメイトとして大事にする、新庄のそういうところが、嫌いじゃなかった。


ただ、自分とは違う。

それだけだ。


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